教理史3 公同の教会の形成
「亜流」との対立を重ねる中で、主流派内に教会の「公同教会」( ecclesia catholica )という連帯意識と「公同信仰」という共通理解が次第に形成され、「古カトリック・キリスト教」の伝統が生まれる。この伝統の形成は二つの流れによるという。
第一は「なにがキリスト教であるか」を問うもので、その結果、使徒的な信仰、文書、教職制、礼典の四規準が確立されるが、いずれの規準も公同性と使徒の時代からの伝統という「使徒性」が要となる。
第二は、そのような使徒的、公同的伝統をキリスト教内外に向けて弁証する流れで、小アジア学派、アレクサンドリア学派、北アフリカ学派などに分類される弁証家が教会内の異端と教会外の異教と哲学とに多様に対立する中で古代キリスト教の神学が形成されることになる。
1.公同の教会
(a)信仰規準( regula fidei ):「使徒信条」は最も代表的なもので、後のニカイア信条などにも影響する
(b)新約聖書正典( canon ):使徒あるいはその関係者によるものという「使徒性」と内容的にキリスト教の正しい信仰を表現する「正統性」を規準として結集を見たもので、具体的にはマルキオンの新約正典に対抗するものでもある。
(c)司教制度:公同諸教会に見られた教職制度には、中央集権的なローマ型から小アジア、パレスチナ、エジプトなどに見られた合議制によるものまで多様な形態があるが、共通要素は司教が公同の教会と信仰の保護者とみなされることである。
2.弁証家たちによる神学の形成
弁証家による多様な活動の背景には、福音が主にヘレニズム世界の住人に語られたことからする福音のヘレニズム化という現実があり、その結果としてキリスト教神学が誕生することになる。
(a) 小アジア学派:「聖書神学」と呼ばれる特徴を持つ伝統で、エイレナイオスやヒッポリュトスに代表される。
エイレナイオス:フランスで生まれ、ラテン語が理解できる。彼はギリシャ語とラテン語ができる。『全異端反駁論』が彼の著作。
ヒッポリュトス:ローマのヒッポリュトスとして知られる。基本的な考え方はアイレイオスと一緒で『使徒伝承』がある
(b) 北アフリカ学派:実践神学的な特徴を持つ伝統で、テルトウリアヌスやキュプリアヌスに代表される
テルトウリアヌス: 根本的な出発点は権威―神の権威、キリストの権威、とりわけ教会の権威の問題
キュプリアヌス:権威の問題
(c) アレクサンドリア学派: 思弁的かつ組織的な神学を特徴とする伝統で、クレメンス(アレクサンドリアの)やオリゲネスに代表され、古代キリスト教随一の神学者オリゲネスにおいては「キリスト教哲学」の形成さを見、また、後の三位一体論やキリスト論は主に彼の用語によって表現されることになる。
オリゲネス:なぜ、オリゲネスは異端者と判断したのか。もっとも重要なポイントは、「万人救済論」である。人間はもともと神によって作られたので、最終的には救われると言ったからだ。