HUKUROU書斎 Piaoriyongの日常

池袋で牧師をやっています。クリスチャンとして、牧師として日常を綴る

教理史(教义史)

教理史12 中世末期の思潮

トマスの死(1274)から宗教改革の舞台へのルターの登場(1517)までの約二世紀半の過渡期は教理史においては極めて重要である。唯名論的スコラ学、総会議至上主義、ルネッサンス・フマニスムなどの新思潮が台頭し、いずれも伝統的な中世神学に挑戦…

教理史11 スコラ学

1.スコラ学の台頭 教理史と初期スコラ学の台頭 従来、スコラ学の台頭は「信仰と理性」の対立史の観点、あるいは十三世紀のトマス・アクィナスにおいて完成するスコラ学の観点から説明される傾向があったが、今日では人間論と救済論において新展開を見たア…

教理史10 中世神学の発展

スコラ学 中世前半期に台頭したアウグスティヌス主義と中世後半期に起こるスコラ主義との過渡期(11-12世紀)を本項は問題とする。この時期は修道院制度の充実、修道院を中心とする信仰覚醒、十字軍の遠征などに象徴される宗教復興期であり、教会法の整…

教理史9 アウグスティヌス伝統主義

教会史では「暗黒時代」としばしば呼ばれる西方中世前半(500-1000)において、アウグスティヌスの権威は絶大であり、この時代の教理史の伝統を「アウグスティヌス主義」( Augustinianism )あるいは「アウグスティヌス伝統主義」( Augustinian tradi…

教理史8 東方教会と西方教会

東方教会 西方教会 教理に関しても東方教会と西方教会は次第に独自の歩みを始め、両教会間の「分裂」という歴史的事態が教理史にさらに影を落とすことになる。 「分裂」に関連した多数の教理の中でも教会の政治形態と「フィリオクエ論争」の重要性が特筆され…

教理史7 正統主義の樹立

イエスキリストのicon 1.正統信仰の一致: ヴィンケンティウスの「規準」をもって表現すれば、「どこででも、いつでも、すべてによって」( quod ubique, semper, ab omnibus )信じられているものが公同的伝統、すなわち正統主義ということになる。 「どこ…

教理史6 自然と恩恵

アウグスティヌス 人間独自の能力が救いにどこまで有効であるか、神の恩恵はこの能力とどのように関わるかが問われる人間論と救済論の展開である。 1.東方教会と西方教会の人間論 地中海世界において古代キリスト教が直面した異教およびキリスト教異端の多…

教理史5 キリスト両性一人格論

司教たちの並ぶコンスタンチヌス大帝を描いたイコン(325年第1ニカイア公会議で) ニカイア信条にある、キリストは「父なる神の本質から生まれた、真の神からの真の神、生まれたものであり造られたものではなく、父なる神と同一本質(ホモウシオス)」という…

教理史3 公同の教会の形成

「亜流」との対立を重ねる中で、主流派内に教会の「公同教会」( ecclesia catholica )という連帯意識と「公同信仰」という共通理解が次第に形成され、「古カトリック・キリスト教」の伝統が生まれる。この伝統の形成は二つの流れによるという。 第一は「なに…

教理史2(教义史2)キリスト教の亜流(紀元二世紀から三世紀初頭にかけて)

キリスト教の亜流(紀元二世紀から三世紀初頭にかけて) 代表的な亜流にはエビオン主義、グノーシス主義、マルキオン、モンタノス主義を数えることができるが、ユニークな教理体系を持つこれらの亜流が主流に対して共通して挑戦となった問題点の中で、最も重…

教理史1

教理史序論